私のトレーニング計画|FTP310W・65kgから乗鞍チャンピオン優勝への14ヶ月設計図


「どう練習すれば勝てるか」ではなく、「今の自分と優勝の間に何があるか」から設計する。感覚ではなく数字で、1日単位ではなく14ヶ月のスパンで——これが筆者のトレーニング計画だ。

この記事の要点


  • 優勝ラインは高地補正込みで海面FTP 5.7〜5.8 W/kg出力+25〜35W体重-5kgを両方やって初めて届く。

  • 平日朝ローラー1時間+土日実走という時間制約を、ポラライズド設計(80/20)で最大化する。

  • VO2向上はRattlesnake(30/15ハードスタート)で天井を上げ、週末の登坂と50分シミュで持続力を作る。

  • デッドリフトはハードな日に集約し、VO2の前日には絶対入れない

前の記事で「サブ53分にはFTP 380W・体重60kgが必要」と書いた。では実際にどう積み上げるか。この記事はその設計図だ。

01 / GAP まず、優勝に必要な”数字”を直視する

ゴールが2,720mの高地である以上、平地で出せるパワーはそのまま出ない。高地ではFTPが6〜10%目減りする。本番で5.3 W/kgを出すには、海面で5.7〜5.8 W/kgを作っておく必要がある。現状と到達目標を並べるとこうだ。

項目 現状 レース時の到達目標
体重 65 kg 60 kg
FTP(ローラー) 310W = 4.77 W/kg 〜345W = 5.75 W/kg
FTP(登坂実走) 320W = 4.92 W/kg 〜350W = 5.83 W/kg
デッドリフト 1RM 120 kg 135〜140 kg を維持

必要なのは「出力アップ」と「減量」の両輪だ。片方だけでは届かない。14ヶ月あれば現実的だが、上限はストレッチ目標になる。正直に言えば、+20W/−5kgでも上位入賞圏には入る。刻み方を間違えないことがすべてだ。

02 / STRATEGY 限られた時間を最大化する5原則

プロのように1日5時間は乗れない。武器は「平日朝の1時間」と「週末」だけ。この制約下で勝つために、次の5つの方針で全体を貫く。

  1. 01
    ポラライズド寄り(約80/20)。平日ローラーは高密度の高強度、週末は有酸素ボリューム。中強度の”だらだら走”を削る。
  2. 02
    タイムクランチ設計。平日1時間にVO2と閾値を凝縮。持続力と登坂特異性は週末へ。週8〜11時間が稼働範囲だ。
  3. 03
    並行筋力トレ。デッドリフトは重・低レップで最大筋力を作り走力へ転移。筋肥大はW/kgに不利なので狙わない。
  4. 04
    疲労耐性(デュラビリティ)重視。乗鞍は後半が地獄だ。長時間走の終盤に閾値を入れ「疲れても踏める脚」を作る。
  5. 05
    段階的減量。強度の高いブロックでは絞らない。年間を通じてゆるやかに、レース期に60kgへ。

03 / ROADMAP 14ヶ月のロードマップ(7期構成)

今は2026年6月。本番は2027年8月後半想定なので、約14ヶ月=実質2シーズンぶんの滑走路がある。これを7つの期に分けて積み上げる。

時期 主眼 デッドリフト 体重
P0 ベンチ調整 26.7–8 今季乗鞍を「実力測定」に使う 1回/週 64–65
移行 26.9 完全回復・乱れ走 休/軽
P1 筋力+ベース 26.10–12 最大筋力構築+有酸素土台+SST 2回/週・重 64
P2 ベース2/FTP 27.1–2 FTP再構築・VO2導入 1–2回/週 63
P3 ビルド1 27.3–4 閾値ブロック+VO2ブロック 1回/週 62
P4 特異性 27.5–6 登坂特異・疲労耐性・実走化 1回/週 61
P5 ピーク 27.7 レースシミュ・VO2鋭敏化・暑熱馴化 軽1回/週 60
テーパー+本番 27.8 疲労抜き・刺激維持 60

2027年大会の正式日程が出たら、ピークとテーパーの位置を前後に合わせ込む。各期の詳細はそれぞれの時期に記事として更新していく。

04 / MICROCYCLE 週はこう回す

代表として「P3 ビルド1(VO2+閾値)」の1週間を示す。火・木のローラーの質さえ守れれば、水・金は体調次第で遠慮なく休んでいい。英雄的な1日より、途切れない連続性が乗鞍では効く。

曜日 メニュー
完全休(火のVO2に脚を残す)
Rattlesnake(30/15ハードスタート×3セット)→ 同日にデッドリフト(維持1回)
Z2 60分 or 休
閾値オーバーアンダー 3×[2分105%/3分95%]
実走:登坂閾値 3〜4×12〜15分@310〜330W(計3〜4h)
実走:Z2 2〜3h(終盤に疲労耐性テンポ20分×2)

筋トレの置き方

デッドリフトは「ハードな日に集約」が鉄則。VO2やキー閾値の前日に重い脚を作らない。同日にやるならバイクを先、デッドリフトを後。そしてその翌日は必ず楽な日か休養を置く。

「火=VO2+デッドリフト → 水は回復 → 木は閾値」。維持期は3×3@80〜85%で追い込まないため、VO2の後でも問題なくこなせる。

05 / ENGINE エンジンの天井を上げる ── Rattlesnake

VO2max向上は、従来の5×3分(Gorby系)ではなくRattlesnakeを主役に据えた。Rønnestadの研究で、30/15ショートインターバルのほうがVO2maxとLT出力の伸びが大きかった、という背景がある。ローラーFTP 310Wでワット化した構成がこれだ。

VO2max · 30/15 Hard-start

Rattlesnake

3セット/セット間 3分 @ 155W ・ 1セット約12分

1:00
434 W
ハードスタート(140%)— 一気にVO2を天井近くへ
続けて 30秒オン / 15秒オフ(オフ 124W)を漸減で計15本:
372W ×3 → 360W ×3 → 353W ×3 → 347W ×3 → 341W ×3
3:00
155 W
セット間レスト(50%)→ 残り2セット繰り返し

狙いは、最初の1分で素早くVO2を引き上げ、その後パワーを段階的に落として「90%VO2max以上の滞在時間」を最大化すること。きついうちは2セットから始め、こなせるようになったら3セットへ。

短 vs 長は決着していない

この「短インターバル vs 長インターバル」論争はまだ決着していない。一部のコーチは「30/15は無酸素パワーは上がってもVO2maxの長期的向上には弱い」と批判する。

乗鞍は53分の持続勝負だ。だからRattlesnakeだけに振るのは特異性の面で危うい。平日Rattlesnake=天井上げ/週末の登坂閾値+本番前の50分シミュ=持続力、と役割を分けることで両取りする。

06 / DETAILS 体重・高地・ペーシングの考え方

減量は「週0.25〜0.5kg以内」で

65→60kgは14ヶ月あれば余裕だ。焦らない。VO2・閾値ブロック中は絞らない(回復と適応を優先)。タンパク質は1.8〜2.2 g/kgで筋力を守り、本番に60kgで臨む。直前のクラッシュダイエットは出力を削るため厳禁だ。

高地は「暑熱トレ」で先回りする

可能なら本番前日入りして軽く試走。難しければ本番3週間前から暑熱トレ(サウナ/厚着ローラー)を週2〜3回。血漿量が増え、高地の代替効果が一部得られる。

ペーシングは「前半抑え・後半同等」

序盤の急勾配で踏み過ぎない。高地が効いてくる終盤2/3に余力を残す。補給は本番もキーセッションも60〜90g炭水化物/時を、練習から腸を慣らしておく。

優先順位、迷ったときはこの順で

① 連続性 > 単発の追い込み
② 火・木ローラーの質
③ 週末の登坂+疲労耐性
④ デッドリフトの維持
⑤ ゆるやかな減量

最初の一手はストイックな練習ではない。2026年の乗鞍を全力で走り、出たタイムでこの計画の出力・体重目標を微調整すること。実測値から逆算するのが、遠回りに見えていちばん確実だ。

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